日進月歩

文章を書く練習

焔の命 観劇雑感

オフィス上の空プロデュース 火遊び pray.08

火遊び公演「焔の命--女優の卵がテロリストになった理由」

5月11日(金)19時公演

公演後、物販にいらっしゃった脚本・演出の松澤くれはさんに「いま全然感想うまくまとまりません…………」とお伝えしたら「あとでSNSにでもぜひ!」と仰っていただいたのでよ〜し書いちゃうぞ〜!と思ったのですが、ツイッターに書けるテンションじゃなかったので久しぶりにブログを書きます。しかし結局全然まとまっていない。

楽しかったとか、観てよかったとか、そういうことを軽々しく言えない、でもたくさんの人に観て色んなこと考えてほしかった、そんな作品でした。観た人がどんなこと考えたかすごく気になって、観劇してからずっと「焔の命」でツイッター検索してるし引っかかったブログ全部読んだ。関係者か。

 

 https://uwanosora-hiasobipray08.jimdo.com

 

国内最大と言われたテロを取材するノンフィクションライターの視点と、テロの主犯格とされた主人公・真理子の語りを中心に話は進んでいく。

劇団のメンバーがテロ行為に傾倒していく過程がとても恐ろしく、だけどなぜか妙に納得してしまうような説得力があった。冷静に考えれば絶対におかしいのに、追い詰められていたり同調圧力があったりすると、あんな風に進んでいってしまうのを止められないのかもしれない。演劇をしたい、演劇で世界を変えたい、演劇で思いを伝えたいという信念から、自分たちが売れないこの世界を変えたい、ぶっ壊してしまいたい、どんな手段を使ってでも主張を伝えたい、と変化していってしまう流れが不自然なはずなのにどこか自然に感じてしまって恐ろしかった。起こってしまったことは絶対に許されることではないんだけど、では具体的になにがいけなかったのか、どうすればよかったのか、うまく答えられない自分がいる。

真理子の彼氏が言っていた「あそこで止めておけば事件は起こらなかった、そういうのはありません」という言葉がやけに残っている。事件は止めようのないものだった、と結論付けてしまいたくはないけれど、何が悪かったのかとは言えない、ひとつひとつの歯車が少しずつずれていってしまった結果でしかないのかもしれない。

劇中の言葉に反することを言うけれど、わたしたちと劇団員たちは違う。法の目で見れば最後はこちら側とあちら側の人間になってしまう。だけどやはり、その境目は非常に曖昧で、少しのきっかけで彼ら彼女らもこちら側にまだいたのかもしれないし、逆にわたしたちが些細なきっかけであちら側に行くことも当然ある。

 

劇団がなぜ売れないのかのくだり、どこまでリアルなんだろう。劇団やってる人ならまた違う視点で見えてそう。いやいや集客が悪いことについて「観客が育ってない」とか言われてもな!?と思ったけど、まあ確かに観劇って最初の一歩までが一番長いんだよなあ。時間もお金もかかるし、劇場まで行かなきゃいけないし。そうまでしても面白いって保証ないし。でも、だからこそ演劇なんだ!と熱く語っていた森さんが最後に演劇を捨ててしまったのが重かった。

 

余談ですが真理子と赤城さんの車でのシーン、以前似たようなことがあって、血の気と相手への好意が音を立てる勢いで引いたことを思い出したのだけど、後ろでわりと笑っているおじさんがいて、そうかここは笑いどころになるのか…………と勉強になりました。(?)

 

作中で人物として興味深いと思ったのは真理子の妹、伊玖子。姉とは反対に思ったことをずばずばと言う、けれどやりたいことはやれず、最後には「ピアノを続けたかった」と残して自殺してしまう。真理子のように爆弾を投げるのではなく、自分を殺すことで自分という卵を割ってしまった伊玖子。自分のために生きられなかった伊玖子が最後に死を選んでしまったのがとてもしんどかった。

 

最後のセリフに重みしかなかったのと、公演が終わってカーテンコールがなかったことで芝居と現実の境目が曖昧になって、なんとも言えぬ居心地の悪さというか、もしかしてお芝居じゃなくてひとつの出来事を今まさに目撃してしまったのではないかという気持ちにすらなってしまった。公演前に松澤くれはさんが「舞台上と客席に境目はない」ということも仰っていて、今回すごく『境目』という言葉について考えたなあと思う。『あの人はおかしいから罪を犯した、異常だから自分たちとは違う』『舞台と客席は別物で自分は客だから舞台をつくる立場じゃない(からスマホの電源をつけっぱなしにする、公演中に遠慮なく咳をする、等々)』とかって境目をひくのって便利だけど、無責任。実際に人間の感情や行動の過程に境目はなくて、最終的にどうだったかの違いでしかないのかもしれないと思った。

 

劇中のちょっとした言葉とかが松澤くれはさんの他作品とも少し繋がっているらしくて、その辺がわからなかったのがもったいなかったな〜と思うので、機会みつけて他の作品も観たいです。