日進月歩

文章を書く練習

8月観劇振り返り

いなくなった猫の話

紅桜共和国第一宇宙空港近くの古いビル、一階のバー〈微睡亭〉。
カウンター越しに物憂げに立っているオーナーの小夜に、常連客が、その日の仕事の愚痴をぼやいている。
酔いつぶれる直前で常連客が帰った後、小夜は一人、炭酸水をチェイサーにジンを飲み始める。
3杯目に差し掛かる頃、店の扉が開いた。
小夜は、「悪いね。今日はもう、おしま…」と言いかけて言葉を飲み込んだ。
そこに立っていたのは、年老いた猫型ハイブリッド。
見るなり、影郎を思い出したからだ。

バーのような劇場で行われた二人芝居。去年の初演は6人?でのお芝居だったらしいですが原作は2人なので今回の方が原作寄りだそうです。会場が心なしか狭め(byひろたかさん)なのと座席がL字型に配置されていることで、見る場所によって印象ががらりと変化する舞台でした。客席と演者が近くて表情や呼吸ひとつも見逃さないような空間だったので、90分ほどと比較的短めながら濃密な時間でした。杉本さんはドレス姿がセクシーだし歩くと良い匂いするし1mの距離で見ても変わらず美しいし小夜の切実な思いを常に100%で演技にぶつけてくるし、相馬さんも老いさらばえたという言葉が似つかわしくないほど顔が若いし台詞は少ないけれど表情から切々と伝わる感情が心を揺さぶるし、良い意味でとても疲れるほどに引き込まれる作品でした。猫と、というか人間以外と暮らしたことが無いので共感できるか若干不安もあったのだけど、人間だから犬猫だからどうということはなく、小夜にとって影郎は息子のようであり好きな人であるとわかってからはかなり見やすかった。お酒を飲みながら観劇が出来るので、猫型ハイブリッド(人と猫の混血動物)と一緒にバーでお酒を飲みながら小夜の話に耳を傾けているような感覚になれたのも新鮮だった。しかし連日の猛暑と空調の偏りとアルコールの強さが相まって体調不良者続出だったので皆さんお酒には気を付けましょう、まあほぼ毎日飲んでた人が言うな案件ですが。日替わりで“気まぐれな客”という人物が登場して諸注意などお話してくれたのだけど、ひろたかさんはほぼ“チャラいバイト”だし亜斗武さんも“ベテラン店員”だったので、ハルニさんだけがちゃんと“気まぐれな客”でした笑 でもひろたかさんの諸注意が公演前半の日々の楽しみだったし亜斗武さんもお酒のこと教えてくれて公演前から楽しかった!ハルニさんはすごく設定に忠実で(設定とか言うな)、自己紹介から公演の諸注意まで本編に繋がるような言葉を使ってくれるので愛とこだわりを感じた。

木馬よ廻って

アッシャーとモルグという2人の少女が、モルグが夢で出逢った格二郎というおじさまを探すが、彼は「木馬は廻る」という話の中にいる人物で…という、江戸川乱歩の「木馬は廻る」を元に別視点で展開していく物語です。30分ほどの短編ながらかなり濃い。末原作品として楽しみにしていたから原作未読で行ったけど、1回見てこれ絶対に原作読んだほうがもっと楽しいぞ…と思って2回目と3回目の間に図書館に走った。結論、どっちが先でもいいので両方見てほしい(再演あるかわからないけど)!モルグとお冬、アッシャーと格二郎の言葉のリンクが痺れるので。アッシャーもモルグも外から見ると最後は結構辛い気持ちになるんだけど、末原さんが言うように2人にとってはあれが幸せなんですよね、きっと。あと獏の鳴き声が「バクバクバク」なのかわいすぎて無理。360度席なの好きだけど、今回は席によって見えないところや見逃すところが多くてもったいなさすぎたので普通の席でやっても良かったのでは、という気持ちも若干。演目が30分だからなのか毎回アフトがついていたのだけど、全員素だとだいぶぽやんとしていたのでいつかそういう平和な物語でも出逢いたいです。

タイムトリロジー

ゲイジュツ茶飯の第6弾と第7弾を見てきました。タイトルだけ伝え聞いてたものがいくつも出てきてそれだけで楽しかった!これ好きだなあと思った大半が同じところの作品だったので今度は本家を見に行きたいなあ、と思うなど。

変わり咲きジュリアン

終活の話と聞いていたのだけど、死に向き合うというよりは、生きてきた道と向き合うという話だったのかな、と思いました。過去と現在が緩く混ざり合っている感じがひと夏の幻っぽくて好きだった。小道具の使い方が独特で、脚立を新幹線の頭に見立てたのはさすがに笑ったけど、個人的にはハンガーを蝶々に見立てたのがお気に入りでした。あと全部生演奏だったのが贅沢だった…。女優さんたちが特に壮絶で良かった。田上さん演じるジュリアンの、理不尽を嫌っていたのに気付くと理不尽の中に生きてしまう苦しみが重たかった…そして踊りがセクシー。永瀬さん演じる六実の「わたしに舞台を用意してくれるべきなんです、そう思いませんか?」の辺りの狂気を感じるほどの想いと、夢を見ることを諦めたあとの無気力さの差が強烈だった。小澤さん、アフトでは隅っこでにこにこしてるのも違和感ないのに演技しているときは真ん中に立つ人、となるのがすごい。引っ張っていくタイプの真ん中というかんじでもなさそうなのだけど…ピラミッドのてっぺんじゃなくて円の中心、みたいな(伝わるだろうか…)。目立ちたくないとか死後誰かの手間になることは望まないという消極的な部分から、最後に榎本に居てほしいとか三春に部屋を片付けてほしいとか口にするようになった変化が、小澤さんの静かな立ち振る舞いから伝わってきた。藤原さん演じる榎本の声色の変化がすごくて、声優さんでもあると知って納得。新幹線(現在)と飛行機(回想)の中を、椅子に座ってほぼ身動きも無いままに行き来するところが作品で1、2を争うくらい好きだった(もうひとつはラジオ体操)。相馬さんの広島弁めちゃくちゃ怖かった…。2日目に、怒鳴るってわかっててでもその細かいタイミング忘れてしまって最初の泣いてるところからずっとびくびくしてた。でも誠一に「いい事を教えちゃる」ときのワントーン落ちるところに含みが見えて鶏の連鎖を感じた…。林さんはマジでおっさんでしかなかった(褒めてます)。娘役の2人のみならず甥っ子役の2人にまで「父ちゃん」と呼ばれて稽古前のコンビニでビックダディみたいになってたエピソード好きすぎるし、最終日のカテコ前にバラしのバイトと間違えられたの愉快すぎた。

ローリング・ソング

あらすじ読んで重た目かと思っていたので予想以上に笑いどころが多くてびっくりした。優馬くんが操り人形したりブチ切れながらツッコミ続けたり、中村雅俊さんが変顔したり、森田涼花ちゃんが汚い言葉でブチ切れていたりした。そして元気一発納豆を売り歩く松岡充がめちゃくちゃ面白くて天才だった。嘘と勘違いの境目がわかりにくかったけど、なんかうまくおさまってハッピー☆みたいな話を久しぶりに見たので幸せでした。みんな歌うまいし最後に銀テというか小さいヒラヒラとんで本当にライブみたいだったし楽しかった。でも、すうちゃんがアイドルっぽい歌と踊りを披露していたので心臓が痛くなりましたね…。ところでわたしの見る音楽劇、誰かが歌うと他の人が「なんでいきなり歌い出すの!!?!?」とツッコミを入れがちなんだけど音楽劇ってそういうもんなんですか…?

マリーゴールド

初めての繭期。誘ってくれた友人と、末満さんは鬼だ〜〜〜( ; ; )と言いながら帰った。確かにとんちゃんさんの脚が5mあったことと街灯と並んだときにシルエットが同じだったことくらいしか笑いが無くてもうほぼ絶望していた。なんでみんな幸せになれないんだろう。つらい…………。先月観劇した壱劇屋さんの「独鬼」とテイストが似ていて、でも独鬼は最後に少し光があった分、マリーゴールドの重みがキツかった。初見でこれなら過去作も見たら死んでしまう、と言いつつ過去作品の鑑賞会をすることになったので勉強してきます。いやしかしサンシャインシティ劇場であのクオリティの歌が聴けると思っていなかったのでひっくり返りましたね…宝塚とめいめい…。蛇足ですがわたしの今年のサンシャインシティ劇場歴がピカレスク◆セブン、ホストちゃん、マリーゴールドなので計60人くらいは見送っている。サンシャインシティで人が死なないやつ見たい。